FFⅦ 古代種の神殿 楽曲分析 ゲーム音楽に多い「コンテクスト型」の曲


FFⅦ 古代種の神殿 楽曲分析 ゲーム音楽に多い「コンテクスト型」の曲diceworks

Temple_of_The_Ancients

ゲーム音楽分析シリーズ・FINAL FANTASY編。(分析にはコードチャートテンプレートを使用するとわかりやすいです)

FFⅦより「古代種の神殿」です。

英語名は「Temple of the Ancients」つまり「古代人の神殿」です。

ゲームの設定どおり、古代種がつくった神殿というわけですね。

過去文明の遺跡らしく怪しい神秘感のある変わった曲です。

さてこの曲はFFらしさ満点の典型的なダンジョン音楽です。場面を彩るための舞台装置に徹した「ザ・ゲームBGM」という感じです。

こういう曲の場合、Keyを厳密に特定することはそれほど意味がありません。

また、コードプログレッションやファンクションの分析も厳密にはやらないことが多いです。

こういう曲を「コンテクスト先行型」の曲と呼んでいます。ゲーム音楽でよくあるタイプです。

ダイアトニックコードを用いたコード進行は、ファンクションによる明確なドラマ性があります。

対して、コンテクストKeyをきめてダイアトニックコード内でストーリーをつくっていくというよりは、

ひとつのコード進行なりメロディなりリフなり、1パターン雰囲気のあるコンテクストをつくったら、あとはそれを変化させて繰り返していくというデジタルなやり方です。

つくったコンテクストに微妙にバリエーションをつけながら、使うコードを変えたり、マイナーにしたりメジャーにしたり、スケールを転調させたりしてひたすら繰り返していくわけです。

ダイアトニックコードにとらわれない、スケールチェンジが多いという点ではテクノやハウス、ジャズ、ミニマルなどスケール(モード)主体型の音楽に近い感覚です。

ゲーム音楽はモーダルミュージックのひとつの系統として位置づけることが可能なのかもしれませんね。

RPGの音楽なので、主役はあくまでゲームのストーリー。だから音楽で新たにストーリーをつくって邪魔してはいけない。ゲーム音楽は「舞台装置」を提供するだけなのです。

ですので、ダイアトニックコードでのストーリー性を持たせない、コンテクスト型の曲が多いのです。

まあ、ストーリー型でもコンテクスト型でも、スクゥエアのゲームは音楽が良すぎてゲームが進まない場面も多々ありますね。

曲の構成は次のようになっています。

BPM=110

イントロ

Em Emaug | Em6 Emaug

これを2回し。

A

Am Amaug | Am6 Amaug

これを4回し。

(イントロにもどる)

A’

Aと同じ。メロディが変わる。

B

G G6 | GM7 G6 | D Daug |D6 Daug | ・/|/・ |

G G6 | GM7 G6 | Dm Dmaug | Dm6 Dmaug  | ・/|/・ |

(イントロにもどりループ)

 | ・/|/・ |は前の2小節繰り返しという意味です。

ご覧のとおり、イントロで提示された

Em Emaug | Em6 Emaug

がスケールチェンジしながら繰り返されるだけです。

5度が半音ずつ上がったり下がったりしていくパターンですね。ラテン系によくあるやり方です。

これがこの曲の緊張感あるコンテクストを形成しています。

Bではメジャースケールになったり6thコードになったりしていますが、コードの内声が1音だけ半音ずつ上がっては下がるという構造は同じ。

メロディはAとBで異なりますが、スケールに沿ったものになっています。

かなりシンプルでわかりやすいです。こういうタイプの曲はダイアトニックコードによるドラマ展開を考えない分(まったく考えないわけではないですが)、より気軽に遊びながら作れる感じですね。

一度場面に合った雰囲気のあるパターンでコンテクストをつくったら、あとは好きなように変形させてループさせていくだけですから。

FFではこういうタイプの曲は非常に多いです。「J-E-N-O-V-A」とか「神の誕生」とか近いですね。

モード音楽的な作曲方法でありながら、構成やメロディの変化などダイアトニックでのストーリー性も持ち合わせている、コーダルミュージックとモーダルミュージックの中間に位置するような音楽です。

作り方としてはかなり楽しいやり方です。作曲方法のレパートリーに加えてみてはいかが?ひとつパターンをつくっただけで簡単につくれます。

わたしがこの方法でつくったのがこれです。


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