若林一美『死別の悲しみを超えて』
子を失った親を中心に、大切な人の死を経験した人たちの人生模様を取材。とくに「悲しみの変容」という、死後一年目から十年以後までの死別の悲しみがどう変わるかという描写に心打たれる。トルストイ「イワン・リッチの死」を借りて「死はすべての人に訪れるものと理論的にはわかっていても、所詮は他人事」というところ、それは死の喪失を知らぬ身分にとっては痛い指摘だが、人間はそういうものだろう。身近な人の死、それを体験したことないものとあるものとでは、きっと見える世界は違う。いまだ体験したことがないなら幸福であろうと言えるかもしれないが、いずれくることなのだから、せめてこういう本や何かで疑似体験しておかねば、と思う。逆に、もし自分が死んだなら身近な人がどう感じるのか、それを考えることにもなる。