作曲時、メロディのかたちはとても注意を払うポイントです。ふっと自然に浮かんだメロディであっても、あとで推敲するときには全体のかたちを見てどこかを整えるはずです。
ではメロディの「かたち」とは何でしょうか。英語ならば
Shapeーシェイプ
Contourーコントゥアー
Figureーフィギュア
などの言葉を用いることが多いです。すべて「すがた・かたち」を意味するヴァリエーションです。具体的には、記譜したときの
・進行の種類、方向(順次 or 跳躍、上行 or 下行)
・インターバル(1-8度)
・リズム・音価
などによって決定されます。これらがいわゆるメロディの「種類、タイプ」「モチーフ」「テーマ」といったものを考えるときに、構成要素として言及するものです。
たとえば、8分音符・2度の順次進行の連続を中心につくられたメロディは、よどみなくすらすらと流れるような響きとなります。2分・全音符中心ならば、息の長いのびやかな、開けた印象を与えます。
コードトーンを飛び渡るアルペジオ的なメロディは、メロディとハーモニーの中間的な、適度なゆらぎをあたえ、良い意味で「ボカす」ような効果が期待できます。また、完全にアルペジオでなくとも、コードトーンを中心に跳躍と順次をまじえた特定のかたちを繰り返すことはよくあります(英語では「Figuration-フィギュレーション」などと呼ばれる操作です)。
これらの要素をどう組み合わせるかで、メロディのキャラクターやイメージというものが決定されます。よいメロディを書く人は、この「キャラクターつくり」がうまいのだといえます(キャラクターにはスケールやハーモニー、音色などの種類ももちろん関わっていますが、ここではメロディのかたちだけに焦点を当てています)。ですので、メロディつくりがうまくなりたいなと思ったら、これらの要素のバランスよい組み合わせを意識してみるとよいでしょう。
数学的に考えれば膨大な組み合わせが考えられますが、ランダムに組み合わせても不器用なメロディにしかならないので、実際にはパターン化されていきます。これらのパターンは、とくにクラシックやポップスのメロディを注意深く聴いたり分析したりすることでつかめてきます。
たとえば、シューベルトのImpromtus(No.1-4)をメロディのかたちに注意して聴いてみましょう。
No.1
同度(ユニゾン)と2度音程中心。ここではハーモナイズしたメロディ(コーダルメロディ)にもなっていますね。器楽曲ではよくあることです。
No.2
同度(ユニゾン)と2度音程中心。
No.3
2分・全音符中心。
No.4
アルペジオ、フィギュレーション。コーダルメロディも出てきます。
いかがでしょうか。感覚的によいメロディかどうかを判断するには、「歌ってみる」ことが一番よいことではあります。しかし感覚的にすべてのメロディの続きを書いていけなくなったときは、論理的なアプローチとして、進行の種類、インターバル、リズム・・・これらの要素をバランスよく配置することに意識を向けると、うまくまとめられると思います。ぜひ譜面でみたときにバランスがとれたかたちになっているかどうか確認してみましょう。
DTMで作曲していると譜面からはなれがちですが、譜面を書くというのは、メロディのかたちを俯瞰的にみて、メロディを推敲、修正するための手段でもあるんですね。
Impromptusの譜面はIMSLPからフリーDLできます。