趣味の考察、気ままなコンテンツアナライズ。フィクションやストーリーの内容と構造を書き留める。鑑賞時の楽しみ、また作る側のヒントとして。
1、キャラクター
キャラクターは
・普遍的テーマ
・ゴール
・ファンクション
+α(個性)
をもつ。
脇役はNPCと同じで、ファンクションしかもたない。
一キャラ一テーマをシンボライズしていることが多いが、特に重要なキャラには複数のテーマが内在すると葛藤があっておもしろくなる。
ここでα(個性)というのはそのキャラに独自に付加するパラメータ。身体的特徴、病気、特技、特殊な経歴など。これらの個性はストーリー展開を制限することがあるため、無闇に付加するのでなくテーマとの関連で必然的なものをつける。
しかし主人公や主要キャラは個性がなくても他3つがあれば問題ない。
個性が強いと魅力的だが、強すぎる個性は逆にストーリー展開に支障が出ることがあるのか、以外と没個性的なテンプレート通りの主人公というのは多い。むしろ準主人公クラスに個性が強く魅力的なキャラが多い作品は膨大にある。主人公よりもライバルや敵キャラの方が圧倒的に人気だったりする。
要するに主人公はストーリー展開の軸でしかなく、駒としてバランスよく動かせればよいという考え方。ただし後づけでパワーアップしたりパワーダウンしたりして個性が付加されることもある。
しかし主要キャラがファンクションしかもたない場合は、致命的に魅力がないので問題。ファンクションしかないと本当にただの限定的な駒でしかない。
2、テーマと世界観
まず普遍的テーマがある。古典や文学、名作に親しんでそれを知っておくとよい。
そして、そのテーマを現代的に読み替える。今の世界にあてはめて考える。そうして浮かび上がる現代版テーマを発見する。発見したテーマの中から描きたいものを選ぶ。(例:ジョジョの奇妙な冒険は「人間賛歌」をテーマに書いていると作者の荒木飛呂彦先生はたびたび語っている。)
次に「世界観」をイメージする。どんな世界を描きたいか、どんな世界なら選択テーマをよく描けるか。現実世界の要素をどんなメタファーに変換するか。少しずつ世界観を描き込んでいく。
設定した世界の中に、主要キャラクターを投げ込む。そこで生まれるストーリーの方向性をイメージする。
ストーリーを進ませるための仕掛け=謎、サスペンス、リドル、パズル、ゲーム要素などを考える。
そしてストーリーを開始する。
⚪️鑑賞・分析の視点
A テーマ、キャラクター
キャラクターはテーマを象徴している。キャラクターの性格、行動、目的からテーマを推定。
B 世界観
描かれている世界が、テーマを生かすための世界か、純粋にアートとしての世界か、あるいは両方かを判断する。
C ストーリー
世界観とキャラクターの関係性で見る。ストーリーは、問題(謎)ー解決、構造的欠落(不足)ー回復、キャラクターの純粋なゴール・野望・・・などで進む。
問題ー解決方法は何か。構造的欠落は何か。
D 謎、サスペンス、トリック、ギミック
ストーリーをいかに論理的に、自然に進ませるか、その仕掛けを考察。凝ったもの、必然なもの、まったく偶然なもの、の3つ。
推理・サスペンス系ならそれ自体がテーマと直結しているので、当然凝ったものが要求される。ネタ尽きずに生み出し続けるのは大変。
推理系以外なら、構造的に起きるのが必然と思われる事件や展開でも十分可。中途半端に練った謎はいらない。また、そもそもテーマに関係なく、解決する必要のない問題に丁寧な答えを用意することも無駄。そこはある程度論理的ならいい。または、まったく答えを用意しないでいい。特にホラー系(なぜゾンビが発生したかなど、なぜ世界が崩壊したかなど、考えても仕方がない、どうやって生きるかが問題。)(『がっこうぐらし!』『ウォーキングデッド』など)
キャラクターと世界観がしっかり設定されていれば、ストーリーは勝手に進むので、その過程で起きるであろう細かいことについてあまり深く練る意味はない。大筋を踏まえて、矛盾のないように気をつければ、ストーリーのなすがままに仕掛けを発生させてもよい。ただ、テーマに関連することや、重要な分岐点に関することはきちんと考えて準備する。
なんとなく分析できたら、それぞれの要素に名前をつけて、ジャンル分け、カテゴライズをしてみる。既にある名前をあてはめても、自分で考えてもよい。
一般的な「ホラー、ミステリー、サスペンス、SF」などの区別は定番だが、
現代ジャパ二メーション、漫画カルチャーから生まれた「セカイ系、ゾンビ系、アポカリプス系、日常系」などという言葉も参考になる。
カテゴライズしてみたら、それらの系統のオリジナル、クラシックにあたる重要作品を調べてチェックする。クラシックと、同系統の他の作品との差異を比較し、その作品の独自性を考える。
作品の強度、普遍性は何で決まるか。もちろん4つすべての要素がバランスよく設定され描かれていること。しかしどれかの要素に偏っていても一応エンターテイメントやアートとしては成り立つ。
人間賛歌・悲喜劇をベースとするテーマなら、世界観とキャラクターを元にどこまでも続けていくことができる。次にキャラクターがどんな行動をするのか、それ自体が謎となり進んでいく。基本的に、長く続き多くの人に影響を与えることができる作品はこれを中心に据えている。(あらゆる王道漫画やジブリ映画など)
ストーリーを重視するなら、論理性、整合性、ファクトの正確さ、専門的知識が要求されるのはもちろんのこと、現実世界との関連性も重要になる。展開のうまさ、演出、盛り上げ方、感情体験の豊富さ、キャラクターの成長、はじまり、途中、クライマックス、エンディングなど、あらゆる要素をぬかりなく矛盾なく描きこむには職人的手腕が必要になる。風呂敷の広げすぎや、唐突すぎるどんでん返し、苦し紛れのありえない偶然や事件の発生などは厳しく批判される(がこれはかなりの人気作品にもしばしば見られることは確か)。だが完璧を求めすぎると書けないので、ある程度は博打でやらなくてはならない。(『20世紀少年』など)
まったく空想の世界でファンタジー的ストーリーを描くとしてもそれらの制約は付きまとう。独自の概念や用語を使うとしても、それらは現実世界のメタファーでイメージできるものでなくてはならない。独自用語を出しすぎてわけがわからなくなるのはよくある残念パターン。(『ファイナルファンタジー』など)
ファクトベースに特化すると、ときにジャーナリズム的、社会批判的になることもある(「ゴルゴ13」など)。
世界観を重視すると、かなり絵画的、アート的になる。雰囲気重視のため、浸ることが重要であって、あまりストーリーや人物に深みをもたせることはない。そのうち飽きるかもしれないが、たまにふと思い出して戻ってきてみたくなる。(短編作品や伊藤潤二さんの漫画など)
謎、サスペンス、トリック、ギミックを重視すると、純粋エンターテイメントになる。遊ぶこと、楽しむことが目的なので、その他の要素はテンプレート通り。そのうち新しいネタを考え続けることが困難になる。最初の一回目が一番面白く、それ以降は面白さ半減、いずれ飽きる、ということもある。だから飽きさせないために後からいろいろと大きな謎や設定を追加したりすることもある。(『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』『魔人探偵脳噛ネウロ』など)
他にはスタイル、形式自体がテーマのような挑戦的、実験的な作品もある。「トリストラム・シャンディ」や「意識の流れ」系統の作家などが古典だろう。構造、語り口が特殊なもの、メタフィクションなど。当然真新しい効果だけを狙っただけなら心には残らないだろうから、やはり普遍的テーマもあってそれと関連で必要性があって使われるのが望ましい。手段と目的を間違えない。
おまけ
・いわゆる王道大衆娯楽作品に欠かせない要素
勇気ーCourage
友情ーFriendship
愛ーLove
謎ーMystery
サスペンスーSuspense
あると面白い要素、話を重層的にするためには必要
裏切りーBetrayal
歴史ーHistory
サブストーリーーSub Character’s Episodes
あとはジャンルごとに必要な要素など
・ネーミング
キャラクターの場合
明らかにテーマを象徴するー
空条承太郎(受け継ぐ)
緋村剣心(剣の心)
浦飯幽助(霊界探偵)
桜木花道(目立つ、勝利、のし上がる)
風祭翔(駆ける、飛翔する)
あるコンセプトやルールに基づいて規則的に割り振るー
カカロット、ベジータ、トランクス(野菜とか下着)
イルミ、ミルキ、キルア、アルカ、シルバ(しりとり)
エレン、ジャン、アルミン(ドイツ系)
クラウド、スコール、ティーダ(天気)
単純にことば遊びや作者の感性で決める
シャルナーク、ネフェルピト〜、モントゥトゥユピー
あららぎ暦
通常ありえないようなインパクトのある名前、変な名前
黒崎一護
夜神月
戦場ヶ原ひたぎ
衛宮切継
単純すぎるくらい平凡、覚えやすい
ゴン
アキラ
ケンジ
特徴や位を表す
朽木白夜(貴族)
四宝院夜一(貴族)
セイバー、ランサー、ライダー(階級とか武器)
特に意図なし、普通の名前
岡部倫太郎
高橋
佐藤
鈴木
参考:
荒木飛呂彦「コンテンツの秘密」川上量生