DIATONIC CHORDS


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DIATONIC CHORDS
 ここではポピュラー・ミュージック作曲の基本である「ダイアトニック・コード」について考察してみます。 
 
TOPICS
 
 
2つの基本スケール
 コードについての理解の初歩は、『ドレミファソラシ」から始まります。誰もが慣れ親しんだこの音階は、「Cメジャー・スケール」と呼ばれ、白鍵のみで構成される、作曲において最も基本的な音階です。
 ピアノの中央に位置する「ド」が、五線譜中央の「ド」にあたります。そこをはじまりとして、白鍵を順番に右に弾いていき、オクターブ上の「ド」へたどり着く。そこから再び7つの白鍵をたどっても、Cメジャー・スケールです。反対に、中央ドから左へおりていっても、白鍵と開始音「ド」を守っている限り、Cメジャー・スケールです。Cメジャー・スケールをCメジャー・スケールたらしめているものは、このスケール開始音「ド」と、白鍵という音の並び方です。仮に、開始音を「ラ」にしてしまうと、これは「Aナチュラル・マイナー・スケール」となります。このように、白鍵上の7つの音「ドレミファソラシ」から導き出される、「Cメジャー・スケール」と「Aナチュラル・マイナー・スケール」は、最も基本的なスケールとして、コード学習の初歩に利用します。
 
 コードの組み立て方に進む前に、これら2つのスケールの特徴について見ていきます。弾けばわかる通り、メジャー・スケールは明るい響き、ナチュラル・マイナー・スケールは暗い響きがします。
 
音程
 このようなスケールの性質を決定するのが、音程(インターバル)です。音程とは、ある音とある音との間の距離のことです。1オクターブを、どのような音程関係で分割して並べるか、その操作によってさまざまなスケールが生まれるのです。メジャー・スケールとナチュラル・マイナー・スケールの音程関係は、基本のものさしとして、最初に学習します。
 
 1オクターブは12音あります。ここでは、鍵盤中央「ド」(261.63Hlz)からスタートし、オクターブ上のド(523.25Hlz)の間の1オクターブを抜き出してみます。
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 スケール開始音と1オクターブ上の同じ音は、周波数が2倍の関係になっています。つまり、ある音を基準としたとき、その周波数の2倍の音(1オクターブ上)までの間を分割することで、異なる周波数の音の並びをつくりだしたものが、スケールと言えます。オクターブ間を数学的に正確に12分割する調律を「十二平均律」といい、現代のほとんどのポピュラー音楽はこの調律で作られています。多くのスケールは十二平均律という世界の中で、5ー7音で分割されています。他に純正律という調律もありますが、これは一般的ではありません。
 
 この12音を、全音・半音というまとまりを用いて並べ直す、つまり「音程関係を定義する」ことで、スケールがつくられていきます。
 
メジャー・スケールの音程関係は次のようになっています。
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つまり、1オクターブを、下から全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音と7つに区切り、7つの音程関係に集約しているのです。
 
ナチュラル・マイナー・スケールの音程関係は次のようになっています。
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1オクターブを、下から全音・半音・全音・全音・半音・全音・全音という7つに区切って並べています。
 
度(デグリー)
スケール内で特定の音を扱うときは、「度(degree)」という単位を用いて、開始音(1度)から順に数字をつけて呼びます。
すなわち
「ドレミファソラシド」
1度・2度・3度・4度・5度・6度・7度です。英語では、root,2nd,3rd,4th,5th,6th,7thと呼びます。これらは、スケール内の音の座標を示す記号です。
また、スケール内のある音を基準とした時、別の音がそのスケール内でどれだけ離れているか数える場合も、このような度数を使います。その場合、間にあるスケール内の音の数を数えます。
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ex:レからファは、短3度離れているーつまりファは、Cメジャー・スケールでは、レを1度として数えると、3番目=3度の距離
 
 ここで「短3度」という言葉が出てきました。この「短」というのは、音程関係を表現する言葉です。音程というのは、いちいち「全音いくつ」「半音いくつ」のような数え方はせず、次のような専門的な表し方をします。
 
短音程(Minor : m)ー2度、3度、6度、7度に適用ー長音程よりも半音狭い音程
長音程(Major : M)ー2度、3度、6度、7度に適用ー短音程よりも半音広い音程
完全音程(Perfect : P)ー4度、5度に適用
増音程(Augumented : aug, +)ーある音程よりも半音1つ分広い音程ー主に4度、5度に適用
減音程(Diminished : dim, -)ーある音程よりも半音1つ分狭い音程ー主に5度に適用
 
※(名称 : コードシンボルにおける表記) 
 
 これらの音程関係を表す言葉と、度という座標を用いて、ある音を基準(ルート)とした時の、別の音との距離を表します。たとえば「ド」を基準としたとき、「ミ」は「全音3つ分離れている」などと言わず、「長3度」離れているといいます。
 距離関係に名称がついている、というのは、はじめはピンとこないかもしれません。これらは鍵盤を触りながら、ヴィジュアルと皮膚感覚で覚えるのが一番です。もちろん、音も聴いて、聴感でも覚えましょう。
 ここで強調したいのは、あるスケールは、1オクターブの中に、どのように長音程や短音程などの音程関係を配置するかという操作によって、作られるということです。もっとも細かく分割したスケールが、全て半音程のクロマチックスケール12音なのですが、ルートからの音程関係をさまざまに変化させることで、通常は7つの音からなる、いろいろな性格のスケールを生み出すことができるのです。メジャー・スケールは、あくまでその中のひとつのヴァリエーションにすぎません。
 
コードの作り方
 では、まずはCメジャー・スケールに注目して、コードを組み立てていきます。基本的なコードは、ルートを基準として、そこからスケール音を3度間隔で・・・「1度、3度、5度、7度・・・」と積み上げていくことで作ります。これは、Cメジャー・スケールの場合、白鍵上の音を、ひとつとばしで押さえることで実現します。Cメジャー・スケールの7つの音について、それぞれをルートとして、コードを組みあげると、以下の7つのコードが現れます。まずは3和音でコードを作ってみます。
 
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 このようにして現れた7つのコードを、「ダイアトニック・コード」と呼び、Cメジャー・スケールから導き出されるダイアトニック・コード群は、ハ長調(Key=C)で使用するコード群となります。
 コードも、ルートの度数に対応して、I-VIIまで番号を当てます。度数と同じように、これらのローマ数字は、スケール内のコードを示す座標となります。メジャー・コードは大文字、マイナー・コードは小文字で表すこともあります。
 ダイアトニック・コードとはあくまで、上のようなやり方でスケールから導き出したコード群の総称です。「ダイアトニック・コード」という名称の特定のコードが実在するわけではありません。
 
4和音の場合
 
 コードは、3和音以上積み上げることも可能です。3和音のみのコードは「トライアド」と呼ばれます。まずは基本としてトライアドを覚えるのですが、4和音まではすぐに覚えてしまって構いません。
 なぜなら…トライアドを構成する3つの音(ルート・3度・5度)が「基本コードトーン」として扱われるのに対し、4音目以上は「テンション」、つまり基本コードトーン外の付加音として扱われます。しかし、4和音は使用頻度が高いので、4和音までを基本コードトーンとして扱うことが多いのです。よって、トライアド+7度の4和音を「基本コードトーン」として、最初に覚えてしまう方が便利です。5和音以上は明確に「テンション」として扱われ、応用的な理論の範疇になります。
 
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ファンクション
 次に、これら7つのコードの機能(ファンクション)と、その一般的な性質について見ていきます。ここからは実際に音を出して響きを確認することが重要です。
 コーダルな音楽では、コードをつなげて「コード進行」をつくり、音楽の流れを作っていきます。ファンクションは、どのようにコードをつなげ、コード進行をつくるか、その道標となります。
 ファンクションとは、ダイアトニック・コードというルールの中で、これらのコードが作曲のために用いられる場合に、果たす役割のことなのです。
ファンクションは3種類あります。
 
トニック(T)ー ダイアトニック・コード内での重心。
サブドミナント(SD)ー ドミナントのサポート or 他のコードからの分岐。
ドミナント(D)ー ダイアトニック・コード内での動的作用。
かんたんに例えるならば、ある音楽の流れをハードル走としたとき、ハードルをジャンプするのがドミナント、その直前の助走や歩幅の調整がサブドミナント、ジャンプ前や着地後のスピードを維持するための安定した走りがトニックです。
 
CM7
Tートニックです。Iのコードは主和音とも呼ばれ、もっとも安定したトニックとして機能します。ダイアトニック・コードの中でもっとも重い重心であり、すべての出発点であり着地点です。ダイアトニック・コード内のどのコードにも自然に進むことができます。
 
Dm7
SDーサブドミナント。マイナー・コードのiiは、同じサブドミナントのIVとは少し異なる使い方ができます。ドミナントの前に置くのが定石ですが、必ずしもドミナントに進まなければならないわけではありません。定番の進行として知られる「iiーV」(ツーファイブ)進行は、強力な進行力を持ち、トニックへの帰結を強く要求します。
 
Em7
Tーiiiのコードは、3つあるトニックの中では重心としてはもっとも軽いコードと言えます。ドミナントVとの共通音を多く持つので、場合によってはドミナントとして機能させることもあります。ダイアトニック・コード内ではあやふやな立場にあるコードと言えます。
 
FM7
SDーメジャー・コードでサブドミナントのIVは、清澄な開放感ある響きをもたらし、楽曲の展開を感じさせます。トニックとドミナントの間をつなぐのに適任です。
 
G7
Vードミナントとして、トニックへの強い帰結を要求するコードです。とくに、4和音では内部に増4度音程を含むので、トニックへの一層強い帰結力が生まれます。
 
Am7
TーIに次ぐ重心として機能するViは、マイナー・コードですので、Iとは異なる効果をもたらします。トニックとしての重心を持ちながらも、完全な終止感はぼかしてしまう、そのような性質を利用した「VーVi」という進行は「偽終止」と呼ばれ、よく用いられます。
 
Bm7(-5)
SD(D)ーViiのコードはやや扱いずらいコードのひとつです。使用頻度が低く、機能の定義も曖昧な部分が多いです。Vとの共通音が多いことから、ドミナントとして扱われることが多いのですが、ルートがIVと裏関係(=増4度音程、やや応用的な知識)であることから、サブドミナントとして扱うこともあります。重要なのは、どちらが間違っているか正しいかということではなく、どのように作曲に使われるかということです。
 
3つのマイナー・スケール
次に、「Aナチュラル・マイナー・スケール」とそのダイアトニック・コードについて見ていきます。
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 ご覧の通り、「Aナチュラル・マイナー・スケール」は「Cメジャー・スケール」と同じ音を使いますので、ダイアトニック・コードの種類も全く同じとなります。ただ、1度と定義する音がAなので、イ短調(Key=Am)となります。このような関係を「平行調」といいます。
 
 ひとつのメジャー・スケールは、対となるナチュラル・マイナー・スケール(平行調)と、音程関係&コードを共有しているのです。メジャー・スケールにおいてViがトニックとして機能するのは、Viがそのメジャー・スケールの平行調におけるiであるからです。
 
 ここでドミナントVに注目してください。ナチュラル・マイナー・スケールのVはマイナー・コードです。マイナー・スケールを用いる際、ドミナントVは、マイナー・コードのままではトニックへの解決力が弱いので、これをメジャー・コードにするという処理がなされます。そのためには、Vの3度の音を半音上げます。これは、ナチュラル・マイナー・スケールにおける第7音が半音上がったスケールを用いていることを示します。つまり、次のスケールです。
 
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これをハーモニック・マイナー・スケールと呼びます。このスケールからも、ダイアトニック・コードを導き出すと次のコード群が現れます。
 
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 ハーモニック・マイナーでは、ナチュラル・マイナー・スケールの第7音を上昇させましたが、このスケールはどこかエキゾチックな感じがします。その原因は、第6音と、半音上昇させた第7音の間にある短3度音程です。この響きのままでは使いづらいので、この部分の音程を、長2度に狭めるために、第6音も半音上昇させることにしました。そうして次のスケールが作られます。
 
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 これをメロディック・マイナー・スケールと呼びます。メジャー・スケールとの違いは第3音が短3度であることだけですので、限りなくメジャー・スケールに近いマイナー・スケールということになります。
 
 メロディック・マイナースケールのルールとして、このスケールでメロディをつくる際、上昇するときは上記の音程を用い、下降するときは、ナチュラル・マイナー・スケールに戻すという習慣があります。上昇するときは、上昇のエネルギーで第6音、第7音が半音上がるのですが、下降するときは、ルートへの重力につられて、第6音、第7音が変化前の音に戻るのです。
 
 メロディック・マイナー・スケールから導き出されるダイアトニック・コードは次の通りです。
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以上が、コードに関する基本の知識となります。
 
・メジャースケールから導き出される7つのコード
・3つのマイナースケールから導き出される7つのコードと、その変化形
・コード進行のパターンをつくる 3つのファンクション
これらの知識があれば、コードを用いた作曲法について読み進めることが容易になります。自分でコード進行をつくる練習をし、いろいろなコード進行の印象を知れば、作曲の練習にもなります。ポピュラーミュージック作曲の大前提となる知識ですので、ぜひ習得しましょう。
 
・曖昧な部分について
 コードに関する理論には、微妙に曖昧な部分が存在し、それが理解を妨げる要因になっていることがあります。何事も理論の学習においては曖昧性をとにかく排除する望ましいはずではありますが、こと音楽に関しては、そういった曖昧な部分、解釈に多様性がある部分を受け入れることこそ、重要な姿勢だと言えます。
 教材によって解釈が異なったり、表記が異なったりすることで混乱しますが、基本の部分は共通しているので、それから離れずに確実に練習を積み上げていくことで、曖昧な部分も含めて理解することが可能になります。つまり「ああではない、こうでもない、結局はこういうことだ!(断定)」という理解の仕方ではなく、「ふーん、あれもあるしこれもあるのね、わたしはこうするわ(他の解釈の可能性を許す)」というニュアンスです。
 
モードについて
 コーダル・ミュージック作曲における基本であるダイアトニック・コードについてざっと解説しましたので、ここでモーダル・ミュージックにおいて重要なモードについて軽く触れておきたいと思います。
 
基本的なモード
 モードとは、かんたんに言うと音の並び方の種類です。まず間違いなく「スケール」と何が違うのかという疑問が想定されますが、それについての議論はややこしくなりますので割愛します。
 
 基本的なモードは、7つあります。それはやはり「ドレミファソラシ(ド)」をもとに導き出すことができます。コードについて解説した際、この音の並びの「ド」を開始音(ルート)と定める「Cメジャー・スケール」と、「ラ」を開始音とする「Aナチュラル・マイナー・スケール」を基本スケールとして紹介しました。実は、この音の並び方(音程関係)を変えなければ、ほか5つの音を開始音(ルート)とした場合も、それぞれスケールが派生するのです。
 
 メジャー・スケールは、インターバル(隣の音との間隔)に注目してみると、
 
「全音・全音・半音・全音・全音・全音・(半音)」
 
となっています。
 
 これら7つの音の、どれを開始音(ルート)にするかで、このインターバルの並び方がずれていきます。それによって、雰囲気が変わる、つまりモードが変わるのです。
 
開始音ーモード名
「ド」ーイオニアン (Cイオニアン)
「レ」ードリアン (Dドリアン)
「ミ」ーフリジアン (Eフリジアン)
「ファ」ーリディアン (Fリディアン)
「ソ」ーミクソリディアン (Gミクソリディアン)
「ラ」ーエオリアン (Aエオリアン)
「シ」ーロクリアン (Bロクリアン)
 
 これは「ドレミファソラシド」つまりCメジャー・スケールをもとにモードを導き出す場合ですが、たとえばGメジャースケール「ソラシドレミファ#ソ」からモードを導き出す場合も、同様に開始音をずらせばよいのです。モードを決定するのは、インターバルなので、開始音をどれにしても、インターバルさえ守れば、モードをつくれます。
 
 このうち、モーダルなアプローチの作曲において使われることが多いのは、イオニアン、ドリアン、リディアン、エオリアンです。はじめは、この4つの中から、作曲に使うモードを選びましょう。
 
 試しに、ドリアン・モードを選んで、リズムに合わせて気ままに弾いてみるとよいでしょう。良いなと思えるメロディやリフなどがつくれたら、記録しておきましょう。 
 
 いろいろなモードを活用したモーダル・アプローチによる作曲法は、「MODAL」カテゴリで考察しています。