ゲーム音楽で作曲を学ぶ


ゲーム音楽で作曲を学ぶdiceworks保存版記事

【ゲーム音楽という文化】

日本のゲーム音楽は日本が誇る優れた音楽文化。かつてはマニアックな趣味だとか差別されがちだったが、今ではオーケストラレーションされてコンサートホールで演奏されたり、海外にもファンがいたりする。

とくに80年代~90年代にかけてのファミコン・プレステ全盛期の音楽は素晴らしい。どのメーカーも、乏しい発音数と生気のない機械音とノイズしか出せないという厳しい制約の中で、さまざまな工夫を凝らして巧妙に音楽的表現を発明していき、名曲が次々と生まれた。

ドラクエのすぎやまこういちせんせいは、最初期のファミコンで、たった3音のみで壮大なRPG音楽を創り上げた。3音のうち、1音は効果音に使うので、なんと実質2音だけで曲を構成しているという初期ドラクエ3作の音楽はまさに絶技。当時ほとんどの作曲家が「2音ぽっちで音楽ができるわけがない。ふざけるな」と敬遠する中、ただひとり「2音さえあれば音楽はできる」と断言してやりのけた。

その細やかなつくりこみには、当時の音楽職人たちの常軌を逸したこだわりがみられる。一音一音繊細に磨き抜かれ、楽曲のすみずみまで神経がゆきとどき、無機質なはずの機械音に、凝縮された緊張感と手作りの温もりが生まれるのはすさまじい奇跡。当時のどの文献を読んでも、作曲者たちが非常に楽しみながら、また血反吐を吐くほど過酷な思いで制作にあたっていたのがわかる。

子どもの頃はさらっと聞き流していたが、ゲーム音楽というのはそれほどスゴイ。音楽好きじゃなくても、その素晴らしさは知っておいてほしいと思うほど。

しかも、ゲーム音楽は作曲に関しても学べることが多いのも素晴らしい。とにかく少ない音数で曲を再現しているので、ムダが一切なく、ひとつひとつの音韻情報や技法を識別しやすいのだ。

 

【ゲーム音楽の特徴】

いったいどうやって、あれほど少ない音数で曲をつくったのか。
初期のファミコンは、内蔵音源で3つの波形とホワイトノイズしか出せない。これをPSG音源という。3音でメロディー、ハーモニー、ベースを再現し、ノイズでリズムを刻むわけだ。
これを使ったゲーム音楽の技法上主な特徴として次のようなものがある。

ベースがやたらとがんばる。オクターブでブッペッブッペとはねて、リズム感を補う。かたいスラップみたいにきこえるヤツがそう。コード構成音をなぞったりもする。FF音楽のベースはよく動く。

高速アルペジオを多用して、コード感とリズム感を同時に再現する。よくきくと、左右でえんえんとリラリラリラリラうねっているヤツがいる。

疑似ディレイ効果。入力したノートのすぐ後に、弱めに同じ音をして、人工的にディレイを再現する。超こまかい手打ち技で、まさに職人芸。

覚えやすいメロディー、わかりやすい展開とループする構成で統一感がある。理論に基づいたしっかりとした曲つくりで、親しみやすく頭に残る。

などの技法が確立された。たった数バイトのデジタル情報に、これだけの創意工夫が込められている。作曲をするものは非常に多くのことをゲーム音楽から学ぶことができる。

日本楽器の音楽性を備えている!

日本の楽器は、笛や太鼓、三味線や琴のように、つくりが非常にシンプルなものが多いが、多種多用な演奏技法によって、倍音を豊かに響かせたり、細工をして騒音を演出したり、複雑な音色を表現する。対して、西欧の楽器の代表であるピアノは、とてつもなく複雑な構造をしているが、その音色は徹底的に単純化され研ぎ澄まされている。

芥川龍之介の息子で音楽家の芥川也寸志は、『音楽の基礎』のなかで、「音楽に限らず、日本人は本来、単純な物から複雑なものを引き出すことに熱中し、ヨーロッパの人たちは、複雑さの中から単純なものを引き出すことに情熱を傾けたのである」と言っている。

機械の内蔵音源も、他の日本の楽器と同じく超単純である。そもそもほんらい楽器ですらない。それなのに、当時のゲーム音楽職人はこれだけ複雑で表情豊かな楽曲を創り上げた。それはほんとうに貴重な音楽文化遺産だ。

【90年代メーカー作曲家の偉大さ】

そしてわすれてはいけない。そんな後世に残る素晴らしい文化を生み出した当時のゲーム音楽職人たちは、たいていメーカーの一般社員である。それもそう、当時はゲーム音楽のような「くだらぬ」しごとなど、英才教育を受けたエリートが受け持つはずもなく、音楽教育なんか受けてない音楽好きの社員たちが骨身をけずってつくりあげたわけ。おれたちだってつくれる、楽器なんか弾けなくてもできる、そんなロック精神も、ゲームの音楽にはある。

これだけ素晴らしい作品を世に送り出した人たちが、大した給料ももらわず有名にもならず見過ごされてきたのは驚くべきことだ。いつの時代も不遇の創作者というのは存在するが、昔のゲーム音楽作曲者ほど正当な対価を受け取っていないものはいないと思う。昨今のゲーム音楽の重要性があるのは間違いなくこの時代の人たちが死ぬほどがんばったからなのだ。

聴きやすい、わかりやすい、なじみがある、短い、シンプル、勉強にも向いてる、いいことばかりのゲーム音楽の世界。ミニマムな8bitの宇宙を楽しんでほしい。

 

【ゲーム音楽入門】

むかしながらのゲーム音楽特集

星のカービィシリーズ-石川淳

ドラゴンクエストシリーズ-すぎやまこういち

Final Fantasy シリーズ-植松伸夫

Mother 1&2,鈴木慶一,田中宏和

聖剣伝説2,3-菊田裕樹

ストリートファイター2,聖剣伝説Legend of Mana, キングダムハーツなど-下村陽子


クロノトリガー/クロノ・クロス,ゼノギアス,イナズマイレブンなど-光田康典

サガシリーズ-伊藤賢治

スーパーマリオ,ゼルダの伝説シリーズ-近藤浩治

リッジレーサー-佐野電磁(信義)

テイルズオブシリーズ-桜庭統

Wild Arms-なるけみちこ

アクトレイザー-古代裕三

ポケットモンスター-増田順一

ロックマンX-山本節生

 


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