デイヴィッド・ロッジ「小説の技巧」柴田元幸・斎藤兆史訳
近代小説で用いられている代表的なフィクション技巧を50のテーマで解説。各章、はじめに作品の引用をし、そのあとに著者が解説を述べるという形で独立して成立している。そのためどのテーマから読んでもよい。
文学者や文学部の学生なら通じているような技巧の数々が紹介されている。一般読者としては小説家たちの表現への苦心や工夫が感じられてじつにおもしろく、この本を読んでからまた小説を読むのがたのしみになる。
「小説の技巧」というくくりで読むと単なる趣味の読書だが、「いかにして人を楽しませるか、驚かせるか、興味を持ってもらうか」という作家たちの思考を研究する視点で読めば、実際にものを書いている方だけでなく、クリエイターやビジネスマンにも益があるはずだ。
気晴らしの読書に最適で、空き時間に一章ずつ読んでいくのでも楽しい。気軽な読書におすすめ。