CHORDAL


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[CHORDAL]
ここはコーダル・アプローチに関する技法のライブラリです。
 
CONTENTS
 
Narrative or Contextual ナラティヴ or コンテクスチュアル
 コーダルでは、王道的な「A-B-サビ・・・」という展開はもっとも慣れ親しんでいる構成です。コード進行による展開を主軸とするため、セクションごとに異なるメロディ、異なるコード進行を駆使して、ドラマティックな展開を作り出す構成があっているからです。このようなオーソドックスなスタイルは、ストーリーを語るように展開することから、「Narrative(ナラティヴ)」と呼ぶ事ができます。
 対して、コード進行を用いながらも、同じメロディやコード進行の繰り返しが多く、ループ感、雰囲気や印象のみを演出するスタイルも多くあります(特にインスト)。それらは、(もちろん独立した作品としても聴けますが)何か別のメディアに対して何らかの機能をもたらすコンテクストを提供する場合が多いことから、「Contextual(コンテクスチュアル)」と呼ぶ事ができるでしょう。
 前者は歌・メロディ自身が主役の音楽であり、後者は音楽以外の主役に対してステージや背景を与える音楽です。よって、ナラティヴは独立した歌もの・バンドミュージックなど、コンテクスチュアルはゲーム・ダンス・映画・舞台音楽などに多く見られます。
 どちらのスタイルも、様々なヴァリエーションがあります。このアプローチを理解するための基礎知識は、
・ダイアトニックコード
・おおまかなポピュラーミュージック・フォームのイメージ
です。ダイアトニックコードについては様々な書籍で紹介されていますので習得されている方も多いでしょう。[DIATONIC CHORDS]でも概要を記載しています。
 ここでいうポピュラーミュージックフォームのイメージとは、大抵のポップスがA-B-Sabiという、盛り上がる部分と落ち着く部分があるという程度のことで、これはある程度音楽を聴いていればつかめているはずです。具体的な部分については[FORM]で紹介していますが、以下でも記述します。
 
NARRATIVE STRUCTURE
 ナラティブな構成では、メロディとそれに伴うコード進行による展開感を主軸とした作曲方法がとられます。よって主役はメロディであり、ハーモニーはメロディをささえ、楽曲に「開始ー展開ー帰結」の流れと「進行力」を与えることが主な役割となります。これは主に歌もの、バンドミュージック、インストゥルメンタル・ポップと呼ばれるタイプの楽曲制作に適した構成です。
・ダイアトニックコードを使用する
・1小節ごと、2拍ごと、細かい部分では一拍ごとにコードチェンジを行う
・A-B-Sabiのように、2−3の独立したセクションをつくり、セクションごとに異なるコード進行(&メロディ)をつくる
といった要素が自然にとられます。
 
全体のフォームは、
 
メインコーラス(2-3)+サブコーラス
 
の形が王道であり、メインコーラスの数が多くなるほど複雑に長大になってきます。
 
コーダル・ナラティブ・メインコーラスの構造は主に3種類に分けることができます。
 
・ヴァースー導入部分(Aメロに相当)
・プリコーラスーサビ前の展開部(Bメロに相当)
・コーラス(サビ)ー曲の主役部分
 
これらが連続的に展開していき、コーラス後に軽い間奏などのサブコーラスをはさみ、2ループ目に入る、という形が親しまれています。
 
コード進行の使い方も、各セクションごとに一定のパターンが見られます。
 
ヴァース
トニックスケール中心、トニックファンクション中心の落ち着いた進行。メロディも少ないノート数、順次進行中心で穏やかに。コードチェンジの頻度は少なくめ。転調はほとんどなしか控えめ。
コーラス
トニックスケール中心、サブドミナント、ドミナント・モーションを多く使った進行力の強いパターン。メロディは跳躍進行を取り入れた動きの多い音形。適度に転調(モーダル・インターチェンジ)も取り入れる。
プリコーラス
転調やハーモニック・リズムの変化などを取り入れた展開感、緊張感のある進行。コードチェンジの頻度が増加。または逆に、ヴァースよりも短くシンプルにして一旦落ち着ける、など、ヴァースとコーラスの両方に対比するようなつくり。メロディの形も前後と対比させてさまざまな形に。
 
※歌ものポップスでは2ループ目コーラス後やラストコーラス前に「Cメロ(Dメロ)」が挿入されることもあります。これは最後のコーラス前にぐっと盛り上げたり、コーラス後の余韻を引っ張ったままエンディングに持っていったりという役割が多いので、構造的には「プリコーラス」的な性格が多いと見られます。
 
以下でコーダル・ナラティブの具体例を見てみます。
 
EXAMPLES
・Narrative Pops[A-B-S (C-D)+ SubChorus]
王道のポップス。メインコーラス部はA,B(ヴァース、プリコーラス)、S(コーラス、サビ)と記号化。SubChorusはイントロや間奏、アウトロなどの補助的部分の総称です。歌メロ主役のサビを中心に盛り上げていく構成は歌もの、インストゥルメンタル・ポップの定番。
 
 “GOGO TOTORI” 「アトリエ トトリ』
 
・Narrative Instrumental[Chorus A/B/C…+ SubChorus]
このタイプはコーダル・ナラティブですがより器楽的なアレンジに合わせたタイプです。いわゆるサビ抜き構成といって、A-Bメロに相当する部分はあるのにサビらしき部分がない、またはどこがサビか定義しにくいパターン。楽器音色や奏法による表現を追求しやすい構成です。
 
 
CONTEXTUAL STRUCTURE
 コンテクスチュアルな構成は、基本的にはナラティブと同等のアプローチが取られます。メロディとそれに伴うコード進行による展開感を主軸とする、という点は同じです。ただし、同じメロディ(モチーフ)とそのヴァリエーションや似たようなコード進行の繰り返しを多く用い、ループ感や音楽的効果に特価した演出も可能な点で、ナラティブよりも自由な作曲スタイルをとれます。ナラティブがストーリーを語るように単線的な盛り上げ方をしていく構造を好むのに対し、コンテクスチュアルは全体構成は全く自由であり、楽曲の機能によってさまざま変化します。急に盛り上がったり静かになったり、ずっと同じ進行をループすることもあります。文字通り、映像音楽やドラマ音楽など、変化の多いコンテクストに対応するための柔軟なスタイルといえるでしょう。また、モーダル・フォームとの混合(コーダル・モーダル)もよく見られます。
 
このスタイルの理解にも、ダイアトニック・コード、ポピュラー・ミュージックフォームに関する基礎知識が必要です。また、ジャンル問わずインストゥルメンタル楽曲を聴き込んでいるとなじみやすいでしょう。
 
ナラティブ・スタイルでは、A-B-Sのように全体の構成にある程度パターンがありますので、ハーモニーのスキームもそれに対応したパターンが構築可能ですが、コンテクスチュアルではコンテクストによって構成はいくらでも変わりようがありますので、典型的なパターンを導き出すことにあまり意味がありません。単純に、
 
A-B-C-A’-D…
 
といったようにセクションごとに記号を割り当てることになります。そして、セクションごとのハーモニーの使い方も自由です。どこで落ち着つくのか盛り上がるのか、必要なところで使い分けます。
 
また、ある程度曲の長さが確保できる場合、長時間のループを想定した曲作りなどの場合は、クラシック・フォームを模したバランスのよい構成、ハーモニーの使い方がとられることも多いでしょう。それらは例えば
 
Ternary Form(3部構成)
A-B-A’
 
RONDO Form(ロンド・フォーム)
A-B-A-B-A,
A-B-A-C-A-B-A
etc.
 
などです。 主に2部ー3部構成でメイン部分(A)とそのヴァリエーション(A’)、それとのコントラスト部分(B,C…)を繰り返し発展させていくパターンです。これらのフォームには西洋音楽の歴史の中で培われた典型的なハーモニーの使い方があり、それをポップス的にアレンジしたハーモニー構成がとられます。大まかに言えばメインのA部分ではトニックスケール中心の落ち着いた進行、それ以外の部分ではAと対比するように異なるハーモニー、転調などを用いた動的な進行にすることが多いです。
 
「メイン」と「ヴァリエーション」または「コントラスト」の部分をつくり、それぞれA-B-A’…などとセクションを分けて、「メイン部分」に対して他の部分は違いをつけたり、対比するようなハーモニーの使い方をすればよいのです。
 
ここでは、
 
メイン部-[Chorus]
ヴァリエーション-[Chorus]’,[Chorus]”…
コントラスト部-[Chorus B,C]etc.
 
のように整理していきます。「ヴァリエーション」とはメイン部分と共通の部分を保ちながらも、部分的に違いをもたせることを指します。共通する部分の割合が、異なる部分より多いことが、ひとつの基準となります。例えば、メイン部と同じ形のメロディに少し変化をつけたヴァージョン、コード進行・伴奏・奏法に少し変化をつけたヴァージョン、演奏楽器に変化をつけたヴァージョンなどです。メインと似てるが、明らかに異なる部分があります。
「コントラスト」とは、メイン部分と大きく異なった構造、ハーモニーの使い方がとられる部分のことです。共通部分はほとんどないか、少ししかない、または注意深く観察しないとわからないくらいの割合で、明らかにメイン部と異なる印象をもたせます。
 
EXAMPLES
Contextual [Chorus – Chorus’- Chorus’’…+ SubChorus]