🔲 トランスフォーメーション・コード(サブスティテュート・コード)の活用方法
ここでは、「サブスティテュート」の項で紹介した近親スケール群からのトランスフォーメーションの活用モデルを参考に、基本的なトランスフォーメーション・コード(サブスティテュート・コード)の使い方をまとめてみます。
▪️トランスフォーメーション・コード(サブスティテュート・コード)の活用方法
・基本的に、トランスフォーメーション・コードはサブスティテュート元スケールでの進行モデルに従って進行させる
・トランスフォーメーションしてもデグリー・ファンクションはあくまでトニックスケールでのファンクションのまま
・ドミナント7thの形(セカンダリードミナント or マイナースケールのVII)は、4度進行または偽終止的進行(2度上行)が有効
・m7(-5)の形は、ドミナント7(9)のルート省略形と考えて2度上行、またはトニック or サブドミナントの代理
・dim7の形は、ドミナント7(♭9)のルート省略形と考えて2度上行、またはサブドミナントの代理
・ドミナント7th以外の形のものは、トニックやサブドミナントの代理として有効
などが代表的な活用方法です。もちろん他の可能性も考えられますので、いろいろ試してみるとよいでしょう。
これらは後で紹介する「トランスフォーメーション」の項でも共通するルールです。このルールを念頭に置き、改めて基本のサブスティテュートから得られるトランスフォーメーション・コード群を整理してみましょう。
「サブスティテュート」の項ではトニックスケールのデグリーに注目して、それをサブスティテュート・ノートに置き換えることによって得られるトランスフォーメーション・コードをひとつずつ調べてきました。各サブスティテュート・ノートを所属するオリジナルスケールごとにまとめると次のようになります。
From V-メジャースケール : IV#
II-D7
IV#-F#m7(-5)
V-GM7
VII-Bm7
From IV-メジャースケール : VII♭
I-C7
III-Em7(-5)
V-Gm7
VII-B♭M7
From VI- マイナースケール : (IV#), V#
I-CM7aug
III-E7
V-G#dim7
VI-AmM7
(IV#はメロディック・マイナースケール上行形のVIなので、導入するときはV#も一緒にサブスティテュートする。よってII-D7, IV-F#m7(-5), V-G#m7(-5)が得られる。)
From I-マイナースケール : III♭, VI♭, VII♭
-VI♭
II-Dm7(-5)
IV-FmM7
VI-A♭M7aug
VII-Bdim7
-III♭
I-CmM7
III-E♭M7aug
IV-F7
VI-Am7(-5)
-VII♭
VII♭のみ導入する場合は、IV-メジャースケールからサブスティテュートした時と同じ。進行モデルだけ、I-マイナースケールのものに従う。
IV#-III♭の基本サブスティテュートでは、各サブスティテュート・ノートを導入した場合のケースをひとつひとつ見てきましたが、サブスティテュート・ノートは一度にひとつしか使ってはいけないわけではありません。近親スケールでトニックスケールと異なるノートがある2つ以上あるスケールは、VI-メロディックマイナー、トニック・メロディックマイナー(I-mm)ですが、これらのスケールからは、サブスティテュート・ノートを複数導入することも可能です。
2つ以上のサブスティテュート・ノートを導入すれば、よりサブスティテュート元のスケールのダイアトニックコードに近い種類のトランスフォーメーション・コードが得られます。
From VI-メロディックマイナー : IV#, V#
V-G#m7(-5) : VI-メロディックマイナーのVII
これは、IV#のサブスティテュートのところで紹介しました。
From I-(ナチュラル)マイナー : III♭, VI♭
IV-Fm7 : I-マイナーのIV
VI-A♭M7 : I-マイナーのVI
これらは、VI♭のサブスティテュート「サブドミナントマイナー」と同様です。7thのカラーを用いたい場合に使用すると良いでしょう。
III♭, VII♭
I-Cm7 : I-マイナーのI
III-E♭M7 : I-マイナーのIII
これらは、III♭のサブスティテュート「マイナーモードへのモーダルインターチェンジ」で紹介しました。
VI♭, VII♭
VII-B♭7 : I-マイナーのVII7
VII♭メジャーコードは、トライアドの形だと、IV-メジャースケール(IV) 、I-マイナースケール(VII)で共通のコードですので、どちらからのサブスティテュートと考えるかによって、オリジナルファンクションと進行モデルが変わりますが、このように7thコードの場合は、サブスティテュート元のスケール・カラーをはっきり示すことができ、進行モデルも絞られます。VII♭ドミナント7thは、4度進行としてIII♭(同じくトランスフォーメーションコード)か、偽終止的進行としてIに進むのが自然です。
VII♭7-III♭, B♭7-E♭
VII♭7-I, B♭7-C
このように、同じサブスティテュート元スケールからの複数のサブスティテュート・ノートを導入すれば、よりそのスケールのカラーが強くなり、そのスケールへの転調感が明確になってきます。
対して、異なるサブスティテュート元スケールから連続的にサブスティテュート・ノートを導入すると、短いコード進行の間に複数のスケールカラーが入り乱れることになり、トニックスケールの雰囲気は揺らぎ、モーダルで曖昧な雰囲気になってきます。
ex.
C-Fm7-D7-G7-B♭M7-E♭M7-Am7
このような進行では、Fm7(VI♭,III♭)、D7(IV#)、B♭7(VII♭,VI♭)、E♭(III♭,VII♭)というサブスティテュートを連続的に導入して、ダイアトニックな進行から離れ、トニックスケールの雰囲気を揺らがせています。ファンクションやケーデンスなどもあまり意識されず、移り変わるスケールカラーと浮遊感を楽しむような感じです。これがモーダル・アプローチの例で、モーダルな曲作りの主軸となるのですが、コーダルな曲作りにおいても、例えばルースな雰囲気を出したい箇所(間奏、アウトロetc.)などで、ダイアトニックな進行の中にアクセントとしてバランス良く盛り込んでいけば、いい具合にヴァリエーションを作ることができ、効果的です。やりすぎるとアブストラクト感が強くなりすぎますので、適度な度合いでいろいろ試してみるとよいでしょう。
以上が基本のサブスティテュートの例です。近親スケール以外からのサブスティテュートは、「リージョン」の項以降に記述しています。