風景、人物、観念ー音楽におけるキャラクターとムード


風景、人物、観念ー音楽におけるキャラクターとムードdiceworks

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音楽におけるキャラクターとムード

西洋音楽史では19世紀に「標題音楽」「絶対音楽」というコンセプトが明確に意識されるようになって、それぞれ流派があったと言われています。簡単に言うと前者はベルリオーズやワグナーといった、音楽で音楽以上の観念すなわちドラマ、人物、感情、幻想、自然から哲学的概念などを表現しようとする。後者は「音楽以上の何物でもない、純粋なる音の構造物」の芸術的完成を目指していて、ブラームスなどが挙げられます。こういった19世紀的流れの源流には「観念の音楽化」を極限まで高めたベートーヴェン(1770-1827)だと言われています。「英雄」「田園」「運命」などは有名ですね。

 こういった「観念」を音楽で表現するって、どういうことなのでしょう。音は言葉がやるようなやり方で意味を表すことができませんから、リズムや音形や音色や運動(=楽器の音色、奏法、演奏のされかた)に何らかの意味を持たせ、鑑賞者に一定のイメージを想起させているわけです。
例えば、ベートーヴェン交響曲6番第2楽章、おだやかな小川の流れ、The Brook。
ワグナー「ワルキューレ」Magic Fire Music。明滅する炎。
スメタナ「モルダウ」幻想的なモルダウ川。
シューベルト Die Wetterfarhne。風見鶏(イントロ)。

それぞれの音形、音の運動が「川」「自然」「炎」「鳥」などのキャラクターを表現していると同時に、テンポや調性、奏法などで、そのキャラクターが置かれている「ムード」まで鮮やかに感じられます。このように、器楽曲、インストの醍醐味のひとつは、表現されている世界観に触れて味わうことです。人物に会ったり、風景を見たり、ドラマを見るのと同じ感覚で。一方うたものでは楽器は歌の伴奏に徹することが多いです。

鑑賞する場合は、その音楽が表現している世界観を感じてみることを、作曲する場合は、音楽の各要素にもたせる意味をいろいろ工夫しながらつくってみると、楽しいと思います。具体的には、次のような要素があげられます。

テンポ、リズムハーモニー音色伴奏モチーフ(メロディのかたち)

同じメロディとコードでも、これらの要素を変えると、さまざまな風景を表現することができます。ゲーム音楽などではこのようなテクニックを駆使して、各ステージ多種多様なアレンジの楽曲を聴くことができますね。

トトリのアトリエ「足跡をたどって」Following the Footsteps フィールドテーマ

これが次のように変化します。
平原
廃墟
洞窟
荒野

フルートは風、ストリングスは空気、パーカッションと打楽器は土草木大地植物?といった物理的なイメージから、フィルターやディレイによる空間的なイメージ、さらにコードやテンポの変化で心情の操作など、場面ごとに特定のイメージを喚起する語法があるわけです。それぞれの要素の持つ意味を感じてみると面白い。音楽の提示する言語性は最高に面白い分野です。


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