[SUB CHORUS]
曲の中心となる部分を「メインコーラス」とするならば、メインコーラスをサポートしたり、メインコーラスに部分的につけたしたりする部分のは「サブコーラス」といえます。その種類はさまざまですが、わかりやすいものとして「イントロ」「アウトロ」「ブリッジ」「ヴァンプ」「ビルドアップ」「ドロップ」などいった名称で呼ばれているものが、サブコーラスに当たります。曲の始まりや終わりを予感させたり、メインコーラスとメインコーラスをつなぐ役割をしたり、瞬間的なインパクトやキメをかましたりする、短いセクションのことです。
サブコーラスのイメージ
サブコーラスは、メインコーラスのように明確に表現したい対象があるわけではなく、あくまでメインコーラスの間をなめらかにつなぐコンテクストとして機能します。そのため、AメロやBメロのように、明確な作曲イメージをはじめから用意しているわけではなく、後から必要に応じて技術的につくるというパターンが多い様です。
特に狙いがない場合、メインコーラスを作ったあとか、あるいはつくっている最中に、「このような感じのイントロや、ブリッジがあるとうまくつながるな」「ここで意外性ある展開にしたいな」などという具合に、形が定まっていくパターンが多いです。具体的には、モーダルなコンテクストで停滞させる、ユニゾンでキメを行う、メロディやベースを抜く、平行移動をする、などといった定番的な操作が考えられるでしょう。サブコーラスの例を見てみます。
CONTENTS
楽曲の導入部分です。全く新しい要素を作曲するよりは、曲の一部を使用するパターンが多いです。
Part of Choruses, or same as Chorus with no Melody – コーラス引用
コーラスのメロディを抜いてコード進行のみを使う、一部の楽器のみ演奏させるなど、コーラスからの引用で構成するパターンは定番です。
“To Our Surprise”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
Rhythmic Opening – リズムのみ
リズム・セクションのみで始まるパターンです。
Intro-Only Melody – イントロ専用メロディ
イントロ用の簡単なメロディ・フレーズを新たにつくり、薄めのアンサンブルで導入部らしい展開をつくるパターンです。
Main Chorus Opening – サビはじまり
いきなりサビからはじまるパターンというのもよくみられます。
(Independent or Subordinate Transition, Short Cadences, Pose between Sections)
サブコーラスの中でももっともヴァリエーションが多いのが、ブリッジと呼ばれる(ことの多い)セクションです。メインコーラスの前後に差し挟むことで、セクション間の移行(トランジション)をスムースにし、統一的な構成をつくることができます。パターンによってはイントロや他のサブコーラス的セクションとして流用することもできます。様々なパターンがありますが、テクニカルな視点から考察すればいくつか型が見えてきます。
– Harmony Accumulation ハーモニー積み上げ×クレッシェンド
各楽器でハーモニーを積み上げ、徐々にクレッッシェンドするパターンは多く見られます。直後にキメを伴ったり、後述の「フィギュレーション」テクニックと一緒に使われることも多いでしょう。
この曲ではイントロとして使われています。
“Go For It !” , Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
この曲ではイントロ後半部、ループ前では上からハーモニーを積み下げていく逆パターンも見られます。
– Figuration or Sequence フィギュレーション、シークエンス
短いリフやアルペジオ、スケールラインなどのモチーフを用いて、それらをいろいろに組み合わせたり変化させたりするパターンです。これにも幾つかの型があります。
Unizon
ユニゾン
どんな音形であれ、ブリッジ的セクションのフィギューレションでは、ユニゾンは効果的です。
“March in C”, Masashi Hamauzu – UNLIMITED SaGa
“To Our Surprise”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
Chord Tones/Arpeggio
コードトーン/アルペジオ
コードトーンのみで構成される短い音形、アルペジオ的な音形は、ブリッジ的なセクションでは多用されます。
“The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
“March in C”, Masashi Hamauzu – UNLIMITED SaGa
Scale Runs/Lines
スケール・ラン
次のセクションの目的の着地点/到達点であるコードトーンに向かって、スケールに沿ってなだれ込んでいくパターンです。駆け上がり、駆け下がり、フィルインなどとも呼ばれます。非常によく見られる定番の手法です。
“The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
“March in C”, Masashi Hamauzu – UNLIMITED SaGa
Motive Liquidation/Reduction/Condensation
モチーフ単純化/分解/圧縮
楽曲のテーマメロディやモチーフを変形させるタイプです。メロディを分解して短くしたり、長いメロディを短くしたり、特徴的なラインをスケールに沿って単純化したりと、いろいろなやり方が考えられます。
“The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
“March in C”, Masashi Hamauzu – UNLIMITED SaGa
Cadential(Bridge Cadence,Upbeat Chord)
ブリッジ・ケーデンス
ケーデンス的な進行を導入することによって、明らかなセクションの移り変わりを演出し、次のセクションへとつなげます。
“March in C”, Masashi Hamauzu – UNLIMITED SaGa
“To Our Surprise”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
Break
ブレイク
短い空白をはさみ、あえて無音部分をつくることで、セクションどおしの息継ぎ的な役割を果たします。次のセクションに進む際に短いフィルインを挟むこともあります。
“To Our Surprise”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS