ゲーム音楽分析シリーズ・FINAL FANTASY編。(分析にはコードチャートテンプレートを使用するとわかりやすいです)
FFⅦより「星降る峡谷」です。
ここはレッドXⅢ(仲間の犬)の故郷でした。がんばって大人ぶってたけどここに帰ってきたら子どもにもどっちゃったんですよね。
この曲もFFⅦの中では以外と印象深く記憶に残っている人が多いです。
なんともオリエンタルな雰囲気で、どこか懐かしい感じのする、日本人になじみある響きの曲です。
使われている音色は
アコースティックギター、アコースティックベース、笛、ストリングス、太鼓、鈴と拍子木を合わせたような打楽器音と、
Bメロ(サビ)でエレキギター的な音がベースとかぶせて少し使われています。
アコギはもしからしたら三味線を意識したものかもしれませんね。コードトーンの単音弾きが非常に和的です。
たしかここにはレッドXⅢのご先祖さまの伝説のオオカミの墓場があったと思うのですが、
笛の音がまさに孤独なオオカミの鳴き声のように響きます。こんなところもしっかりゲームを意識してつくられている(?)。
そういう工夫は別にしても、なぜこの曲はプレイヤーの心に残っているのでしょうか。
その秘密はきっと、東洋的な音使いにあると思います。
「東洋的」と一口にいっても曖昧ですが、ここでは単に、なんか和風っぽい、日本っぽいな、という雰囲気ということで説明します。
まず、音色が明らかに和楽器を意識したものになってます。
特に印象的なのがメロディの笛です。ピッチを微妙に変化させて揺らがせてますよね。打ち込みなので思い切りピッチベンドをかけて表現しているわけです。
特にサビのレの音に著しくベンドがかけられていますね。この笛の引っ掛かりぐあいが何とも言えず耳に残ります。
ベースにもピッチベンドがかけられています。スライドしている音の表現ですね。
ではコードを見てみましょう。
Key = Em BPMは65くらいで。
イントロ
打楽器とベースラインでリズムを提示。
A: メロディはEマイナーペンタトニックスケール
||:Em7 | G | Am | Em7 | Em7 :||
||: :||はリピート記号ってことで。この中を2回しします。
B : Eナチュラルマイナースケール
Em | Em| Am | G
Em |Em | Am | C | C |Em7 →イントロにもどってループ
これだけです。
コードはほとんどⅰ(Em)、Ⅲ(G)、ⅳ(Am)だけで、サビの最後にだけⅥ(C)がでてきます。
非常にシンプルですよね。
で、気づくことありゃしやせんか。
ドミナントコード(ここではB7,D7など)が一度も出てきません。
それから、AのメロディはEマイナーペンタトニックスケールだけで構成させています。
「ミソラシレ」だけです。
この点もかなり演歌っぽくなってる理由です。
BメロではE-ナチュラルマイナー7音すべて使っていて、より動きが出てサビっぽくなってますね。
まさにわびさびの「さび」です。
というわけで、ここまででだいぶ東洋チックな音のカラクリは明らかになりました。
・太鼓、笛、ほかアコースティックで和楽器的な音色を多用
・アコギ(三味線)の単音弾き(アルペジオ)
・笛のピッチベンド
・ドミナントがなく、シンプルなコード進行
・マイナーペンタトニックスケールを使用したメロディ
ブルース的にも聴こえますが、むしろ演歌です。このメロディにこぶしをつけて歌ったら完全に演歌です。
しかし不思議と古臭さは感じず、むしろコスモキャニオンの雰囲気には見事にあってますね。オリエンタルファンタジーな香りです。
コスモキャニオンは別に和風ステージというわけではないのにこの曲です。不思議と合いますね。やはり笛の音がオオカミの鳴き声を連想させるからでしょうか。