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 [Modal]
ここは 「モーダル」な音楽的技法に関するライブラリです。
 
CONTENTS
  
◾️ Concept of Mode
「モード」という考え方
 音楽においてモーダルという言葉が指す意味は、大雑把に言えば、コードが進行せず、延々とひとつのコード、ひとつのスケールの中で停滞し繰り返されるような音楽のことや、曲の部分のことです。
 
 多くの人は、コーダルな音楽に慣れ親しんでいます。あるコードに対してどのようなスケール(音階)を適用するかについては、「アヴェイラブル・ノートスケール」という理論を用います。コード進行がある音楽ではこの理論にもとづいてコード上で使用するスケールを選択し、ひとつひとつの音を選んでいくわけです。つまり、コード進行ありきで、スケールを選ぶことが多いわけです。
 
 対してモーダルな音楽では、「スケール自体が持つ雰囲気」をテーマとして作曲する、というアプローチをとります。選択したスケールから導き出されるコードを使用し、その上でそのスケール音を使って、音楽を作っていくのです。試しに、白鍵だけで構成される「ドレミファソラシド」を、開始音をひとつずらして「レミファソラシド」と弾いてみてください。はじめのさわやかな雰囲気から、勇壮でクールな雰囲気に変わったでしょう。このスケールを「ドリアン・モード」と呼びます。ちなみに、変化前の「ドレミファソラシド」というスケールは「イオニアン・モード」と呼ばれています。
 
 コードが進行してしまうと使用できるスケールが変わってしまうので(変わらない場合もありますが)、もちろんその雰囲気も変わります。よって、モーダルなアプローチは、コードが進行しないタイプの音楽はもちろん、コーダル曲でもコードを進行させたくない部分、コード進行はあっても、それによる「展開感」を意図しない部分で、局所的に用いられます。だから、ハウスやダンスミュージック、ヒップホップ、ミニマルミュージック、ゲームミュージックや劇伴音楽などと相性がよいのです。あるいはコーダルな音楽でも、イントロやインタールードなどの一部分で見られます。つまり、コード進行による展開感を避けるので、自然とコンテクスチュアルなスタイルが合うのです。
 世界には、曲間通してずっとワン・モードで通されるハードコアな音楽も、コーダルな手法と組み合わせてつくられる音楽も、両方存在します。モーダルなアプローチの利点は、コード進行という概念から開放されることで、より自由な音の配置や、陶酔的なサウンドの構築や、即興的なフレーズあるいは楽曲構成が可能になることです。
 
 モーダル・ミュージックについては、『憂鬱と官能を教えた学校ーバークリーメソッドによって俯瞰する二十世紀商業音楽史』(上・下)、『東京大学のアルバート・アイラー:東大ジャズ講義録・歴史編』(両者とも菊地成孔、大谷能生著)に詳しい記述があります。たとえば、『アルバート・アイラー』では、マイルス・デイビスがモーダル・ミュージックというコンセプトを打ち出したアルバム『Kind of Blue(1959)』を取り上げている第六章で、次のように説明しています。
 
「モードによる音楽は、コーダル・ミュージックと同じく、平均律という調律を使用しますが、機能和声の力では曲を進めようとはしません。モード・ミュージックの基盤となるのは、「ドリアン」や「ミクソリディアン」という名前がつけられた、それぞれ異なった響きを持つモード=旋法=音列です。(中略)例えば、(唄う)「ドレミファソラシド〜」、という音階がありますよね。この音階はある一つのサウンド、響きのキャラクターを持っています。で、例えばこの音階の内で三度のミの音と七度のシの音が半音下がると、それはそれでまた異なった色彩感を持った音階が生まれます。(唄う)「ドレミ♭ファソラシ♭ド〜」ってね。これ、さっきの音階とはキャラが違いますよね。機能和声においてはさ、こういった響きの違う音列はトニックからの距離の中に回収されて、結局、さっきの安定・不安定・中途半端、みたいな機能に還元されてしまうわけですが、モード技法ではそういった考え方をしません。一つのモードは、ある色彩感を持った一つの完結した世界ってことで、たとえその音列の響きが不安定だったり中途半端だったりしたとしても、それはそのモードの持つ個性だってことで、それがどこかに向かって進行したりすることを目指したりはしないんです。(『東京大学のアルバート・アイラー:東大ジャズ講義録・歴史編』p141)」
 
  これは、モーダル・アプローチの理解に重要なポイントです。
 
 
以下、モーダル・ミュージックの手法と具体例を見ていきます。 
 
Parent Scale & Derivative Modes ペアレントスケールと派生モード
 モードは、様々なスケールから派生しています。メジャースケールの7つの音(ドレミファソラシ=CDEFGAB)の、開始音をずらして並べ直すだけで、7つのモードが派生します。スケールは、開始音を「I」(ルート、トニック)として、各音、順番にII-VIIまでの「デグリー(度)」というナンバーを与えて区別します。モードは、「CメジャースケールのIIから派生するモード=Dドリアンモード」というように、まず親(ペアレント)となるスケールを選び、次にモードのルート(開始音)とするデグリーを選び、そこから音を並べ直すことによって得られます。
 基本的なスケールとモードについては、「LEARN-SCALE」の項目を参照してください。
 
Phrase in Modal モーダル・フレーズ
モーダル・アプローチらしいフレーズをみてみます。
 
“The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
“To Our Surprise”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
“The Home of Dragons”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
 
Harmony in Modal モーダル・ハーモニー
モーダル・アプローチにおけるハーモニーの使い方についてみてみます。
 
“The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
 
Modal Interchange モーダル・インターチェンジ
モーダル・インターチェンジとは、その名の通り曲間で使用モードを変更することです。これによってそれまでの雰囲気を変えたり、微妙な色彩の変化をもたらすことができます。
 
-Static Interval(Mere Interchange to Diatonic Degree of Current Mode)
Static Mode
Static Pitch
 
FORM IN MODAL モーダル・フォーム
モーダル・アプローチによるフォームをみていきます。
Contextual (Pure Modal) コンテクスチュアル
モーダルの得意とする、コンテクスチュアルなフォームを見てみます。様々なモードの持つ色彩や雰囲気を生かし、自由自在なコンテクスト(背景、舞台、世界観など)を演出しています。
 
– Thematic Figure(Repeated Figure) Driven
 以下の例は、特定のモード内のトーンを用いた、短い音形を繰り返し用いることで、よりモーダルな印象を強めている楽曲です。
 
“The 13th Reflection”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
“Forze del Male”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
 “The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
 “The Home of Dragons”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
 
– Chordal•Modal コーダル・モーダル
コーダルとモーダル、両方を組み合わせたスタイルを、コーダル・モーダルと呼ぶことができます。メインコーラスの一部だけコーダルで展開感を出し、他の部分はモーダルな雰囲気で停滞させる、などといった形は、ポップスにとって特に意識しないほど慣れ親しんでるスタイルでしょう。
 
– Contextual Chorus Variations コーラス・ヴァリエーション
ex. [Chorus – Chorus’- Chorus’’…+ SubChorus]
メインコーラスがいくつもあるように見えても、それらがメロディやコード進行、モードなどの重要な要素を共有している場合、それらはひとつのメインコーラスとそのヴァリーションだと言えます。以下はコンテクスチュアルなメインコーラスとそのヴァリエーションが豊富な例です。
 
“The 13th Reflection”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
 “Forze del Male”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
 “The Deep End”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
 “To Our Surprise”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS
 “The Home of Dragons”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
“March in C”, Masashi Hamauzu – UNLIMITED SaGa
 

– Structural Fusion of Chordal & Modal Parts コーダル・コーラス&モーダル・コーラス
ex. [Chordal Choruses – Modal Choruses + SubChorus]
コーダル・コーラスとモーダル・コーラスが共存するタイプも多く見られます。複数のコーラスはいずれかのヴァリエーションではなく、異なるメロディやモード、構成を持った別々のコーラスであることが多いです。
 
“Sinister Sundown”, Yoko Shimomura – KINGDOM HEARTS 2
“Mißgestalt”, Masashi Hamauzu – Saga Frontier 2
 
 


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