FFⅦ ゴールドソーサー 楽曲解説 バロック風?和声進行の強烈さ


FFⅦ ゴールドソーサー 楽曲解説 バロック風?和声進行の強烈さdiceworks

goldsaucer

ゲーム音楽分析シリーズ・FINAL FANTASY編。(分析にはコードチャートテンプレートを使用するとわかりやすいです)

FFⅦより「ゴールドソーサー」です。

ここはゲーセンです。ゲーム内のゲーセンです。

ジェットコースターゲームとか、ボクシングとか、スノボーとかバイクとかチョコボレースとかいろんなミニゲームが遊べます。

モーグリを育てる変なミニゲームもあります。これには専用の音楽があります。このゲームに関しては当時意味不明でしたね。コマンド選択するだけで何をしたらいいかわからなかった。←ウワアアアアァアァアッァアァァァアン!!!!あんたにはわからんでしょうね!!!

ゴールドソーサーはFFⅦでも特に強烈な印象が残っているステージ。

ストーリー的には、それまでコレルという寂しい炭鉱都市のようなところにいて、次にいきなりこの金ピカ空中庭園に突入。入場時のムービーがとても華やかで、花火がバンバン飛んでて、キャーキャー喚き声がして、そして楽しい雰囲気にばっちりのキラキラした音楽。

子どものころ「すげー!!!」と口を開けて、まばたきも忘れるほど目を輝かせて驚いた、初見での劇的なワクワク感はすべてのプレイヤーの胸に強烈な思い出となって残っていることでしょう。

この曲を聴くと、その当時の思い出が一挙に蘇ってきます。とにかくゴールドソーサーと言えば、ミニゲームよりストーリーよりもこの音楽が強烈で、ほかの場面はあんまり覚えてません。たしか濡れ衣を着せられて闘技場でバトルしたような気がします。

ではゴールドソーサーの曲がなぜこれほど強烈に耳に残るか、見てみます。

とてもキラキラした豊か響きの曲なので一見複雑に聴こえるかもしれませんが、ふつうの四声体でできています。

使われている音色はメインメロディにオルガン、メロディ2にフルート、内声アルトはファゴット(バスーン)風音色で、ベースはいつものサイン波(w)というかふつうのエレキベース音色で、右パンから微かに聴こえるストリングスはフルートのダブリングです。リズムはバスドラとハットという最小限の組み合わせ。

つまり、5音だけ。実際はもっと音色をレイヤーして音をつくっていると思いますが、基本はこれだけ。かなりシンプルです。

BPM100くらい

A Key=G

Gsus4 GM7onD Em7 D7onF# |

G G Am D7onA-D7 |

Gsus4 GM7onD Em7 D7onF# |

G Am7(onC) D G |

この曲は和声進行がかなりかっちり組まれており、一拍ごとにコードチェンジしている感じです。バスドラがドンと踏むごとにコードチェンジしているように見える。そのため、書いてみるとコードが非常に多い。

ですのでそのまま一小節内に4回コードチェンジしていると見てもよいのですが、各声部がGメジャースケールに沿って強く前進的な動きをなぞっているから、各強拍部ごとにコードチェンジしているように見える、と考えることもできます。

この和声進行はまさに十二平均律万歳!というような、バッハもびっくりなカチカチのクラシカルパターンです。

基本的にトニック→ドミナント進行の繰り返しに、終始部のサブドミナント+ドミナントというカデンツの定型という和声学の教科書どおりの進行なのです。

そして、メロディは楽しく跳ねるような跳躍進行を中心に、その間を縫うように順次進行を絡め流す動き。しかもシンコペーションは一切なしの拍点カッチリ・デジタライズロケート。

第2メロディのフルートはスケールに沿って非和声を絡めた順次進行で滑らかに進み、丁寧にコードを彩っています。

そう、この生真面目ガチガチの和声進行、スケール進行こそが強烈に耳に残る理由。

確か作曲者の植松さんは、インタビューでこの曲はバロック風の曲として作ったと言っていたと思います。

バロックといえばバッハです。

バッハの「平均律クラヴィア曲集」を一度でも聴いたことがある人は、その滑らかできらびやかでいつまでも先を聴き続けたくなるような音の流れを強烈に記憶していると思いますが、この曲も構造的にはそういう作られ方をしているわけで、だからこれほど聴かせてしまう、いつまでも耳に残って離れないんです。

もし聴いたことがない人は一度聴いてみてください。バッハならなんでもいいですが、これなんか和声進行のすごさがわかるのではないでしょうか。頭からぐいぐい引っ張っていって耳を掴んで離さない。

まさに音の連なりが繰り広げる宇宙というか、永遠にそこにはまっていたいような気分にさせられます。

Bメロも見てみます。

B Key=D

D – D A – A | Bm A D Bm |

Em(onG) C#m7(-5) | Em(onD) Bm A7 |

D – D A – A | Bm A DonA A |

Em – on B Em – on B | Em Bm Em – |

G – on D G – on D | G D GM7 – |

Em – on B Em – on B | Em Bm Em – |

G – on D G – on D | G Am Em(onG) D |

Bメロは属調のDに転調しています。というより感覚的にはDメジャースケールへの移行という感じですね。

メロディの後半部、ここもD調と捉えても良いのですが・・・

Em – on B Em – on B | Em Bm Em – |

G – on D G – on D | G D GM7 – |

Em – on B Em – on B | Em Bm Em – |

G – on D G – on D | G Am Em(onG) D |→Aに戻る

音の動きをよくみると、ここは各声部の音の動きを変えないままEマイナースケールとGメジャースケールを行き来しているような感じ(マイナースケールからメジャースケールというインターバルの変化はありますが、音の動きは同じ)です。

EマイナーとGメジャーは並行調なので、移行もしやすく転調感はほとんどないわけです。

また、第2メロディのフルートが、ハーモニックマイナー(ナチュラルマイナーの第7音を半音上昇)刺繍音的に♭5を絡めた滑らかな動きをしています。

よって、それぞれEとGの-ナチュラルマイナーとハーモニックマイナーの融合として見ると、

ここもやはりルートの動きは、[E-B][G-D]つまりトニックードミナントの繰り返し。サブドミナント(Am)は最後のカデンツ(半終止)部に出てくるだけです。

ここまでをまとめると、確かにバロック風のカチカチ和声進行。基本的にトニックードミナントでテクストをつくり、カデンツ部にサブドミナントをもってきてカッチリ締める。意表をつく一時的転調やテンションコードのような現代ポップ的な手法は一切なし、お手本どおりのきれいな音の組み方をしています。

和声進行がしっかり音の流れを生んでいるから、リズムもバスドラとハットという最小限のものだけで事足りるんですね。というかそれすらなくてもしっかり曲として成り立つでしょう。それほどこの和声進行はそれだけで聴かせる力がある。

18-9世紀くらいの本当に初期のクラシックのスタイルというのは、人間の耳に自然になじんで、かつ長く聴いても飽きないように工夫されています。また、テーマがはっきりしていて潔く、曖昧さがない。

ゴールドソーサーの曲も、底抜けに明るいステージのイメージに合わせ、全体的にはっきりと明確に明るい長調で組まれ、和声進行もコテコテのバロック風。こりゃあ誰の耳にとっても幸せなわけです。

ずっと気になっていた曲の秘密が明らかになってすっきりしましたでしょうか?この曲、そのきらびやかな響きから、一見複雑そうに聴こえるのですが、実はメロディ1、メロディ2、内声とベースという、シンプルな四声体でできているのです。

たった4音だけでここまでドラマティックな音楽を作られるのですから、バッハ卿の十二平均律をなめてはいけません。セカンダリードミナントとかサブドミナントマイナーとかテンションコードとかリディアンクロマチックコンセプトとかをやる前に、まずは十二平均律、ダイアトニックコードをしっかりやりましょう。

 


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